Classiques japonais avec furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lisez 沼夫人 (ぬまふじん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 541 caractères · 78 écrans
それから青芒の線を延して、左へ離れた一方に、一叢立の藪があって、夏中日も当てまい陰暗く、涼しさは緑の風を雲の峰のごとく、さと揺出し、揺出す。その上に、萱で包んだ山が見えたが、遠いと覚しく、峰の松が、鹿の彳んだ姿に小さい。藪に続いた一方は雑木林で、颯と黒髪を捌いたごとく、梢が乱れ、根が茂る。
路はその雑木の中に出つ入りつ、糸を引いて枝折にした形に入る……赤土の隙間なく、凹に蔭ある、樹の下闇の鰭爪の跡、馬は節々通うらしいが、処がら、竜の鱗を踏むと思えば、鼈の足痕を辿るよとも疑われた。
次第に山の裾を分け上ると、件の楓を左の方に低く視めて、右へ折曲ってもう一谷戸、雑木の中を奥へ入ろうとする処の、山懐の土が崩れて、目の下の田までは落ちず、径の端に、抜けた岩ごと泥が堆かった。
「沼はこの先でがんす。」
と正吉は前へ立った。……山崩れで、ここに路の切れたのも、何となく浮世を隔てた、意味ありげにぞ頷かるる。
「梅雨あけに、医師と、この骨さ拾いに来っけ。そんころの雨に緩んだだね。腕車もはい、持立てるようにしてここまでは曳いて来ただが、前あ挺でも動きましねえでね。」
と言う。