Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

うたかたのき

泡沫の記

久生 十蘭

Lisez 泡沫の記 (うたかたのき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 889 caractères · 26 écrans

Aozora Bunko

とか、「城の塔から飛び降りたい」などと口走るようになった。

その日は夕方から雨が降りだしたが、夜が更けるにつれていよいよ発揚状態になり、午前二時頃、侍従に、「塔の上へ出るから鍵を出せ」と迫った。

そのとき、グッデン博士が附添を連れて参入してくるのが、下の道に見えた。それで、侍従は、王が広間を通って、バルコンの階段へかかる直前に、うまく博士と落合うよう、時間を計って鍵を渡した。

王は広間の中程のところに佇んで、入ってくる博士の一行を不安定な表情で眺めていたが、「ウルムの山の城へ移そうというのだそうだな。おれは気狂いだから、なにをやりだすかわからないぞ。それが承知なら、移ってやる」

と抑えつけたような喉音で、ゆっくりと呟いた。

十二日、早朝、午前四時十五分、王を四輪馬車に乗せ、馭者台と扉の両側に屈強な侍者が附添い、なにか変事があったら、いつでも馬車を停められるように手配して城を出発した。侍医の一行、附添、使丁、憲兵隊長以下は、二台の二輪馬車で後に従った。

午前十時、ゼーハウプトという村で馬を換えた。王は道端に立っている避暑客に愛想よく会釈をし、駅亭の内儀に「水を一杯、くれないか」