Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
はたのてい
波多野邸
豊島 与志雄
Lisez 波多野邸 (はたのてい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 194 caractères · 45 écrans
ただそういうこと以外、彼は彼女に無関心のようだった。その上、彼の日々はひどく不規則だったので、彼女が彼に接する機会も少なかった。それでも、彼の存在そのものが、いつも重々しく家の中に感ぜられた。彼に大変気を遣っているような房江の影響もあったらしい。
お花さんだけは、何の遠慮もなく彼を昔通りに子供らしく取扱い、そして彼を「お坊ちゃま」と呼んでいた。その呼称が千枝子には羨ましかった。千枝子は彼を何と呼んでよいか困った。お坊ちゃまでは固より変だし、若さまとも言えないし、旦那さまもおかしいし、先生とも呼べなかった。仕方なしに、そこを省略する言い廻し方をしたが、第三者には往々、波多野さんと言った。
気兼ねなくすらすらと出る「お坊ちゃま」を、彼女はお菊さんのところでも聞いた。
お菊さんというのは、もと波多野邸にいた女中で、今では戸村直治の妻であった。彼等は空襲時に罹災して、一時は波多野邸に避難していたが、戸村はすぐ焼け跡に出かけてゆき、壕舎を作って、先ず自分一人そこに住み、地主に交渉して、可なりの地面を借り受けた。その素早いやり方を後で誉められると、彼は事もなげに笑った。