Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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るいこうにかえれ

涙香に還れ

野村 胡堂

Lisez 涙香に還れ (るいこうにかえれ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 844 caractères · 4 écrans

Aozora Bunko

私が涙香に興味を持ったのは十歳位の時であった。最初に読んだのは「如夜叉」で、次は「非小説」、それから「死美人」であったと思うが、生意気盛りになって硯友社畑の小説などに興味を持ち、暫くは涙香と遠ざかって文学青年らしい考え方へと、分りもしない癖に、難かしいものを有難がるように慣されてしまった。

併し、今にして考えると、あれほど天下を風靡した硯友社の作家の中で、歴史的意義は別として、読物として、又は文芸作品として、後世に遺るものを書いた人が果して幾人あったであろうか。当時文壇の埒外に通俗作家として取残されて居た涙香の作品は、五十年六十年を隔てた今日でも、些も昔の清新さを失わず、再読三読して感歎を新にするに反して、これは誠に皮肉な時の批判と言わざるを得ない。

その後私は駆け出しの新聞記者として、晩年の大記者黒岩先生に幾度か親炙し、再びその作物の魅力に引ずられ、三十幾年の長い間、甚だ不熱心乍らも研究と蒐集を続けて来た積りである。

涙香こそは大衆小説中興の祖であり、尽きざる興味の源泉である、半世紀の歳月を閲して、少しの古さも感じさせないというのは、――いや多少の古きは感じさせたにしても、その古さに依って一種のなつかしさと、威容と、そして古典的の美しさを添えるということは、天才の仕事の有難さでなくて何んであろう。