Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

自分のうちに動く見えざる、聴えざる或る力は、若し彼が一刻でも監視を怠ったら、どんなところで、悪運と密会するか分らない。下等な酒場で、下等な女達を笑わせている時いつも彼の心に浮ぶような陰謀は、万に、一の僥倖で、尚子夫人を、自分の許に走らせるかも知れない。けれども、若し、その悪魔的な忍笑いの享楽が、皮一重彼方に表現されたとしたら、もう自分は破滅だ。運命は、今度こそ尚子夫人を使って、命までをも奪うだろうということが、正隆の、最も強烈な恐怖の原因になって来るのである。

たとい、一面からいえば妄想ともいうべき空想通り、尚子夫人が、自分の前に跪(ひざまず)くとしても、運命は、何時自分に絶交状を送って来ただろう。

呪咀は何時解かれたか?

世界中の人間は、若し今度自分が、恐るべき係蹄に掛ったが最後、力を合わせ圧し殺してしまうだろうことを、正隆は思わずにはいられない。

若しかすれば、そんな死を死なせるために、尚子夫人も遣わされたのかも知れないではないか、ここに正隆の、最後の止めが刺されるのである。

それ故、彼の悪夢のような妄想が、たとい僅かでも外面に現われなかった原因は、寧ろ、道義的な自制というより、彼が自己の生命に対して抱いた激しい恐怖が、彼を抱き止めたといい得るのである。