Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

けれども、それは彼女を愛す正隆には堪え得ない仕事であった。

正隆は、信子を失うことを平静に想像することは出来ない。涙なしに考えることは出来なかった。彼女の美と、捧げられた奉仕を、彼は、いざとなって何の悲歎もなく振り捨て得るとは、どうしても思われない。たとい、彼女が、敵の見えざる掌から渡された者でも、若し彼女が自身でそれを自覚もせず、また利用されさえしないならば、自分は、決して彼女を見返すことは出来ない、と思わずにはいられない。どこに彼女ほど、清澄な美を持って生れた女性がいるだろう。

どこに、彼女ほど高い気品を持った女性がいるだろう。

彼女の従順と、謙譲と。醜い女でも持ち得る、そのために人に尊敬さえ払わせる美徳を、比類のない輝くような美に並有している女性、その信子、その婦人が、尚も自分を裏切るだろうという想像は、正隆にとって、恐るべき苛責である。

自分の歯で自分の魂を食う苦しみなのである。

彼は、一日一日と日を経る毎に、その疑惑に堪え得なくなって来た。無言の中に、信子を監視する冷淡に、じっと息を殺してはいられなくなって来たのである。正隆は、ただ一言、はっきりと天地に懸けて誓って欲しかった。