Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans
この反動的な感傷は、今、正隆の疑惑、その所産である苦悶が大きければ大きいだけ、深ければ深いほど、共に強度を増して来るものなのである。
食慾を失って、極度に神経的になった正隆は、殆ど大病人のように窶(やつ)れ果てた。一日中床に就いたきり、起きて動こうとするだけの、弾力を失った正隆は、大きな羽根枕に埋めた頭だけを僅に動かして、傍の信子夫人を顧る。そして、彼は、沈痛な言調で、日に幾度となく、同じ質問を繰り返した。凝(じっ)と坐った彫像のような夫人の小さい手を自分の掌に置きながら、正隆は、先ず、
「信子、お前は、ほんとに俺を愛していてくれるのか」
と、口を切り出すのである。
最初、正隆の質問が唇を離れた時、信子夫人は、微かながら、ハッとした表情を緊張させて、蒼白い、寧ろ土気色ともいうべき良人の顔を、痛々しく眺めた。そして、落付いた声に力を籠めて、
「あなた、御心配はお止め遊ばせ」
といった。
「有難う、信子。俺は心配はしないよ。然し――信子、ほんとにお前は俺が嫌になりゃしないか、こんな不仕合わせな男と、一緒にいるのは、厭じゃあないか?」
「あなたは――、どうしてそんなことをおっしゃいますの、大丈夫でございますわそんなこと」