Classiques japonais avec furigana
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げんおじ
源おじ
国木田 独歩
Lisez 源おじ (げんおじ) de 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 455 caractères · 23 écrans
霧のうちには一人の翁立ちたり。
教師は筆おきて読みかえしぬ。読みかえして目を閉じたり。眼、外に閉じ内に開けば現われしはまた翁なり。手紙のうちに曰く「宿の主人は事もなげにこの翁が上を語りぬ。げに珍しからぬ人の身の上のみ、かかる翁を求めんには山の蔭、水の辺、国々には沢なるべし。されどわれいかでこの翁を忘れえんや。余にはこの翁ただ何者をか秘めいて誰一人開くこと叶わぬ箱のごとき思いす。こは余がいつもの怪しき意の作用なるべきか。さもあらばあれ、われこの翁を懐う時は遠き笛の音ききて故郷恋うる旅人の情、動きつ、または想高き詩の一節読み了わりて限りなき大空を仰ぐがごとき心地す」と。
されど教師は翁が上を委しく知れるにあらず。宿の主人より聞きえしはそのあらましのみ。主人は何ゆえにこの翁の事をかくも聞きたださるるか、教師が心解しかねたれど問わるるままに語れり。
「この港は佐伯町にふさわしかるべし。見たまうごとく家という家いくばくありや、人数は二十にも足らざるべく、淋しさはいつも今宵のごとし。されど源叔父が家一軒ただこの磯に立ちしその以前の寂しさを想いたまえ。彼が家の横なる松、今は幅広き道路のかたわらに立ちて夏は涼しき蔭を旅人に借せど十余年の昔は沖より波寄せておりおりその根方を洗いぬ。