Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
そうせきのじんぶつ
漱石の人物
和辻 哲郎
Lisez 漱石の人物 (そうせきのじんぶつ) de 和辻 哲郎 (わつじてつろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 438 caractères · 23 écrans
ためにする気持ちが全然なければ、相手が金持ちであろうと貧乏人であろうと、大臣であろうと小使であろうと、少しも変わりはない。――ちょうどこの言葉に現わされているような態度を、私は実際に目の前に見るように感じた。
滝田樗陰のことで思い出したが、たぶん大正五年の春であったと思う。木曜日の午後に、樗陰は墨をすりながら、きょうは先生に大きい字を書かせるといって意気込んでいた。漱石は半切に、「人静月同照」という五字を、一行に書いた。二、三枚書きつぶしてから、今度はうまく行ったと言って漱石が自ら満足する字ができた。樗陰も、これはいいと言ってしばらくながめていたが、やがて首をかしげて、先生、この文句は変ですね、と言い出した。漱石は、変なことはないよ、いい文句じゃないか、と答えたが、樗陰は、いや、おかしい、と頑強に主張した。漱石は立って書斎から李白の詩集を取って来て、しきりに繰っていたが、なるほど君のいう通りだ、人静月同眠だね、と言った。樗陰は、そうでしょう、そうでなくちゃならない、月同照は変ですよ、と得意だったが、漱石は、しかしそうなるとまことに平凡だね、といかにも不服そうだった。