Classiques japonais avec furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lisez 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 395 caractères · 263 écrans
それが分らなくて、金輪際僕らになにが見えてくれるもんか」
と陸に跳び上がって、二つある岩路の左手を択んで、断崖を蜒って行った。
「それから支倉君、この事件の女性二人は、それぞれ夫と父の変死に、悲しむ色さえ見せようとはしない。
その比例たるや、すでに常態ではないだろう。わけても朝枝だが、あの暁の精みたいな娘の中には、何でも怖ろしい夢や幻を、そのままの姿で受けつけるような力が張り切っている。
だから、ブレーク、ベックリン、ロセチ、それにドーレの『失楽園』や、キャメロンの『水神』、『ニーベルンゲン譚詩』のデイリッツなど――ああした、すこぶる幻想的な挿画を見るとだね……」
と云いかけたとき、断崖の尽きた岩壁に、日傘が二つ並んでいた。ウルリーケと朝枝が、のぼってくる二人を待っていた。
岩壁の窪みには、菫色をした影が拡がっていて、沖からかけての一面の波頭は、夕陽の箭をうけて黄色い縞をなしていた。
法水は、しばらく雑談している三人から離れて、俯向きながら歩いていたが、やがて速歩に追いつくと、ウルリーケにいった。
「ねえ夫人、艇内日誌には、わずか一、二枚しか残っていないのですが、貴女は切り取られた内容を御存知ですか――そして、誰がいつ切り取ったかも」