Classiques japonais avec furigana
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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 319 caractères · 84 écrans
と云ったなり、眉根を寄せて不機嫌らしく首を振るばかりである。
それから四五日立った或る日のこと、学校の帰りがけに信一の女中は又私を呼び止めて、
「今日はお嬢様のお雛様が飾ってございますから、お遊びにいらっしゃいまし」
こう云って誘ってくれた。
其の日は表の通用門から番人にお時儀をして這入って、正面の玄関の傍にある細格子の出入り口を開けると、直ぐに仙吉が跳んで来て廊下伝いに中二階の十畳の間へ連れて行った。信一と姉の光子は雛段の前に臥そべりながら、豆炒りを喰べて居たが、二人が這入って来ると急にくす/\笑い出した様子が、何か又怪しからぬ徒らを企んで居るらしいので、
「坊ちゃん、何か可笑しいことがあるんですか」
と、仙吉は不安らしく姉弟の顔を眺めて居る。
緋羅紗を掛けた床の雛段には、浅草の観音堂のような紫宸殿の甍が聳え、内裏様や五人囃しや官女が殿中に列んで、左近の桜右近の橘の下には、三人上戸の仕丁が酒を煖めて居る。其の次の段には、燭台だのお膳だの鉄漿の道具だの唐草の金蒔絵をした可愛い調度が、此の間姉の部屋にあったいろ/\の人形と一緒に飾ってある。
私が雛段の前に立って、つく/″\と其れに見惚れて居ると、うしろからそうっと信一がやって来て、