Classiques japonais avec furigana
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とうみょうのまき
灯明之巻
泉 鏡花
Lisez 灯明之巻 (とうみょうのまき) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 444 caractères · 47 écrans
遠くは山裾にかくれてた茅屋にも、咲昇る葵を凌いで牡丹を高く見たのであった。が、こんなに心易い処に咲いたのには逢わなかった。またどこにもあるまい。細竹一節の囲もない、酔える艶婦の裸身である。
旅の袖を、直ちに蝶の翼に開いて――狐が憑いたと人さえ見なければ――もっとも四辺に人影もなかったが――ふわりと飛んで、花を吸おうとも、莟を抱こうとも、心のままに思われた。
それだのに、十歩……いや、もっと十間ばかり隔たった処に、銑吉が立停まったのは、花の莟を、蓑毛に被いだ、舞の烏帽子のように翳して、葉の裏すく水の影に、白鷺が一羽、婀娜に、すっきりと羽を休めていたからである。
ここに一筋の小川が流れる。三尺ばかり、細いが水は清く澄み、瀬は立ちながら、悠揚として、さらさらと聞くほどの音もしない。山入の水源は深く沈んだ池沼であろう。湖と言い、滝と聞けば、末の流のかくまで静なことはあるまいと思う。たとい地理にしていかなりとも。
――松島の道では、鼓草をつむ道草をも、溝を跨いで越えたと思う。ここの水は、牡丹の叢のうしろを流れて、山の根に添って荒れた麦畑の前を行き、一方は、角ぐむ蘆、茅の芽の漂う水田であった。