Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
てんきぼ
点鬼簿
Lisez 点鬼簿 (てんきぼ) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 345 caractères · 9 écrans
と僕に声をかけた。僕は中段に足をとめながら、段梯子の上をふり返った。そこには来合せていた芸者が一人、じっと僕を見下ろしていた。僕は黙って段梯子を下り、玄関の外のタクシイに乗った。タクシイはすぐに動き出した。が、僕は僕の父よりも水々しい西洋髪に結った彼女の顔を、――殊に彼女の目を考えていた。
僕が病院へ帰って来ると、僕の父は僕を待ち兼ねていた。のみならず二枚折の屏風の外に悉く余人を引き下らせ、僕の手を握ったり撫でたりしながら、僕の知らない昔のことを、――僕の母と結婚した当時のことを話し出した。それは僕の母と二人で箪笥を買いに出かけたとか、鮨をとって食ったとか云う、瑣末な話に過ぎなかった。しかし僕はその話のうちにいつかが熱くなっていた。僕の父も肉の落ちた頬にやはり涙を流していた。
僕の父はその次の朝に余り苦しまずに死んで行った。死ぬ前には頭も狂ったと見え「あんなに旗を立てた軍艦が来た。みんな万歳を唱えろ」などと言った。僕は僕の父の葬式がどんなものだったか覚えていない。唯僕の父の死骸を病院から実家へ運ぶ時、大きい春の月が一つ、僕の父の柩車の上を照らしていたことを覚えている。