Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

きせる

煙管

芥川 竜之介

Lisez 煙管 (きせる) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 489 caractères · 14 écrans

Aozora Bunko

一

加州石川郡金沢城の城主、前田斉広は、参覲中、江戸城の本丸へ登城する毎に、必ず愛用の煙管を持って行った。当時有名な煙管商、住吉屋七兵衛の手に成った、金無垢地に、剣梅鉢の紋ぢらしと云う、数寄を凝らした煙管である。

前田家は、幕府の制度によると、五世、加賀守綱紀以来、大廊下詰で、席次は、世々尾紀水三家の次を占めている。勿論、裕福な事も、当時の大小名の中で、肩を比べる者は、ほとんど、一人もない。だから、その当主たる斉広が、金無垢の煙管を持つと云う事は、寧ろ身分相当の装飾品を持つのに過ぎないのである。

しかし斉広は、その煙管を持っている事を甚だ、得意に感じていた。もっとも断って置くが、彼の得意は決して、煙管そのものを、どんな意味ででも、愛翫したからではない。彼はそう云う煙管を日常口にし得る彼自身の勢力が、他の諸侯に比して、優越な所以を悦んだのである。つまり、彼は、加州百万石が金無垢の煙管になって、どこへでも、持って行けるのが、得意だった――と云っても差支えない。

そう云う次第だから、斉広は、登城している間中、殆どその煙管を離した事がない。