Classiques japonais avec furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lisez 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 705 caractères · 173 écrans
」
黒七子の紋つき着流しのまま、葛籠笠を片手に、両刀を手挾んで梯子段へかかる大次郎のうしろから、法外老人と千浪が送りにつづいて口ぐちに、
「ひどいあらしですこと。ほんとに、お山荒れ――。」
「七年前の七月七日も、恐ろしいお山荒れでござった。」
「せめて合羽なと――それに、足拵えもいたしたらどうじゃ。」
「そう遊ばしたら、後生ですから。」
「なに、かえって荷厄介になります。同じ濡れるなら、このほうが気楽。つづら笠は、お山へかかっての三人の眼じるしにと、これも申し合わせのひとつで、はははははは――少し行ったら、着ものを畳んで、裸体で登山ります。鍛練の機会ですから。」
「そうまで言うなら――。」
と、階段の中途に立ち停まった法外先生、ふと思いついて、
「千浪、彼刀を持ってまいれ。兼安を――大次ちょっと待て。」
千浪は座敷へ引っ返して、床の間の刀架けから、だいぶ佩き古した朱鞘ごしらえの父の大刀を持って来て、はしご段のなかほどに待っていた法外に渡すと、老人は其刀を、肩越しに、二、三段下の大次郎へ差し出して、
「さ、守刀だ。これを帯して行け。その、お前の刀は残して、これと脇差と――。