Classiques japonais avec furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lisez 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 705 caractères · 173 écrans
高い山にはよくあるお花ばたけなのである。
三国ヶ嶽から藤屋へ駈け下りた大次郎は、法外先生が階下の白覆面のために、肩に重傷を負わされたのみか、その一行は、騒ぎに紛れて千浪をひっ攫い、急遽袂をつらねて下山の途についたと知るや否、腰間に躍る女髪兼安を抑えてただちにあとを踏み、今やっとこの中腹のお花畑へ、千浪をかこんで麓へいそぐ一同に追いついたところだ。
江上佐助の文珠屋佐吉は、途中も気を配って捜して来たがどこにも見えない。
そして、これが、眼ざす祖父江出羽守とは、大次郎知る術もないが、養父同然の恩師法外先生のかたきではあり、いま目前に、千浪様を掴まえて伴れて去ろうとしている相手だから――大次、しずかに女髪兼安の鞘を払って、とうとう抜いた。
出羽は、猿の湯の猿を殺して山に渦紋を招き、伴大次郎は禁制の女髪剣に陽の目を見せて、いよいよこの紛乱にいっそうの血しぶきをくれようとしている。
きのうの宵、三国ヶ嶽の月が笠をかぶったのは、ただ、昨夜のお山荒れをだけ予言したのではなかった。この、人界の血の暴風雨と、それから捲き起る万丈の波瀾を警告したのではなかったろうか。