Classiques japonais avec furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lisez 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 705 caractères · 173 écrans
大次郎もまた――。
「かような顔になった拙者を、そちは、怖れておるに相違ない。いや、憎んでおる! 嫌っておる! それが拙者にはよくわかる!」
と昼夜、千浪の顔にこの言葉を吐きかけて、千浪を泣かせ自らも苦しんだものだったが。
稽古振りまで、がらり違ってきて、竹刀の先が火を噴くような激しさ、荒さ。
それは弟子どもへの薬になるとはいえ、この大次郎の立合いの鋭さは、そういう意味のものではなかった。
炎のような憎悪!――普通の容貌をしている者への、強いにくしみ――それが、大次の眼光に、道場での木太刀取りに、突き刺すように感じられる。
こうなると、下谷練塀小路の法外道場は淋れて往く一方。
そして、それは江戸の街々に、秋も深まろうとする一夜だったが、大次郎は、風に捲かれる落葉のごとく、瓢然と道場を出奔したのである。
見てはならない自分の顔、下山以来、鏡というものを避けていたじぶんの相貌を、金盥の水かがみに、はっと、見てしまったのが動機となって。
「げっ! か、かほどまでに変っておろうとは! これでは、千浪! そちに嫌われても詮ない道理。うは、ははははは、いや、夢を見た、夢を見た――。