Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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こぶ

犬田卯短編集 一

犬田 卯

Lisez 犬田卯短編集 一 (こぶ) de 犬田 卯 (いぬたしげる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 259 caractères · 96 écrans

Aozora Bunko

「由兄の野郎ずるいや、あとで見るッちだから。」勝はそんなことを三度も由次の後姿に向って浴びせかけたのだったが、こんどは母親に突っかかった。

「俺に股引こしらえてくれねえからだ。こんなひとのものなんど……」

「ひとのものでも自分のものでも、この野郎、それ本当の木綿ものなんだど。きょう日、スフの股引なんど、汝らに穿かせたら半日で裂らしちまァわ。」

おせきは籠の中へ大きな弁当の包みや、万一の用意に四人分の蓑をつめこんで、これまたよろめくように背負い、そして足ばやに勝に追いついて一言の下にたしなめると、やがてすたすたと追い抜き、道の先の方に見える由次や夫に遅れまいと足を早めた。

勝は歯ぎしりして腰を落し、両の手で竹竿を支え上げるようにして母に抜かれまいとするが、そうすると鋤簾の奴よけいにぶらぶらとかぶりを振って、ともすれば、小さい勝の身体を道傍へ投げとばしそうにする。

天秤籠にどさんと堆肥を盛り上げ、その上へ万能や泥掻きなどを突き差して担いだ親父の浩平は、そのときすでに部落を横へ出抜けて、田圃へ下りる坂道にかかっていた。雨上りの、ともすればつるりこんと滑りがちなじめついた土の上を、爪先で全身の勢いを停めながら、彼はそろそろと降りてゆく。