Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こぶ

犬田卯短編集 一

犬田 卯

Lisez 犬田卯短編集 一 (こぶ) de 犬田 卯 (いぬたしげる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 259 caractères · 96 écrans

Aozora Bunko

そのあとから由次が身がるに小さい方の鋤簾をかついで、口笛を吹き吹きつづいた。由次は十六だが、昨年の稲刈り時分から眼に見えて背丈が伸び、いまでは親父の肩の辺まで届きそうになっていた。

「由、その泥掻き、お前持て。駄目だ。邪魔になって、歩きづらくて。」

親父が息を止めて言うと、彼はひょいと横あいからそれを引ったくるなり、左の肩へ鉄砲のようにかついで、そしてとっとと坂を駈け下りた。

一日も早く植えてしまわなければならぬ八反歩ばかりの田を控えて、赤ん坊の手さえ借りたい今明日、尋常六年生のおさよは無論のこと、今年入学したばかりのおちえまで学校を休ませ、そして留守居させての、文字どおり一家総動員の田植作業であった。旱魃を懸念された梅雨期の終りの、二日間打つづけの豪雨のおかげで、完全に干上ろうとしていた沼岸の掘割沿いの田が、どくどくと雨水を吸い、軟かく溶けて来ていたのだ。

明け放れの早い六月の空には何時か太陽が昇って、沼向うの平野はひときわ明るく黄金色に輝き出していた。風もなく、紺碧の沼は崇厳なほど静かだった。やがて浩平一家のものは、よちよちと蟻が長い昆虫を運ぶような恰好をして、勝が、むしろ鋤簾そのものに曳きずられるようにしてやってくるのを殿に、丘を下りて掘割に沿い、自分の作り田へ着いた。