Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

Lisez 狂い凧 (くるいだこ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 111 430 caractères · 226 écrans

Aozora Bunko

私は言った。

「いくらなんでも、五千円じゃムリだろう」

「ムリだろうね」

栄介は平気な声で言った。

「部屋代だけでも、そのくらいかかるだろう」

「じゃ食い代は、どう工面しているんだろう。働いているのか?」

「いや。あの齢じゃ働けないだろう。一度止宿先に訊ねて見たら、毎日外出しているとは言うんだがね」

栄介は移り行く景色を眺めながら、ぼんやりした声で言った。

「上京して来た時、幸伯父はかなり金を持っていたと思われる節がある。財産でも整理して来たんじゃないかと思う」

「城介君が勤めていた葬儀屋は、その伯父さんの知合いなんだろう」

「そうだよ。しかしあの葬儀屋の主人は、死んでしまったらしい。空襲でね」

終戦の年の暮れ、栄介は一度葬儀屋を訪ねたことがある。私鉄の駅を降り、だらだら坂の上から見渡すと、葬儀屋があった付近一面は焼けていて、ずっと彼方に雪をいただいた富士山が、小さく見える。

「ああ。ここも焼けてしまったんだな」

栄介はしばらくその風景を眺めていた。やがてゆっくりと坂を降り始めた。つめたい風が下から彼のオーバーに吹き上げて来た。

葬儀屋があったと覚しき場所の近くに、焼け材やトタンを使った小さな壕舎があった。