Classiques japonais avec furigana
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Lisez 狂い凧 (くるいだこ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 111 430 caractères · 226 écrans
幸太郎は本家の旦那だったからである。彼はふところ手をしたまま、見物したり指図したり批評するだけで、その他は何もしなかった。そのくせ最初に出来た餅は幸太郎に捧げられ、彼はそれを当然の如く食味して、
「これはつき方が足らん。腰が弱いぞ」
とか、
「うん。これならまあまあと言うところだ」
などと批評した。つまり彼はそう齢もとっていないくせに、大旦那ぶりたかったのである。長男であるが故に父祖の財産をひとり占めにして、そして旦那風を吹かすなんて、戦前もずっと昔だから出来ることで、今の時世ではとてもそう行かない。
幸太郎は家業をついでいたが、弟の福次郎はやっと二流か三流の専門学校を卒業して、県庁に勤めていた。借家ではあったが、門と玄関があり、狭い前庭と割に広い裏庭を持つ家に住んでいた。これは収入が多分にあったわけでなく、一般的に借家が安かったせいである。はしくれといえども役人だから、体面ということもあったのだろう。栄介らはその家で生れ、その家で育った。栄介が高等学校にいる頃、ある時福次郎は少し酔って述懐した。
「お前たち双子が生れた時、わしはほんとに苦労したぞ。双子となると、かかりが二倍になるんでな」