Classiques japonais avec furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lisez 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 020 caractères · 131 écrans
」
「よろしおます。あんじょう持って行きますよって安心しなはれ。―――そんなら、もう用事おまへんか。」
「ま、ちょっと待っとくなはれ。」
そう云うと庄造は、バスケットの蓋を開けて、もう一度しっかり抱き上げて、
「リリー」
と云いながら頬擦りをした。
「お前な、彼方へ行ったらよう云うこと聴くんやで。彼方のあの人、もう先みたいにいじめたりせんと、大事にして可愛がってくれるさかいに、ちょっとも恐いことないで。ええか、分ったなあ。―――」
抱かれることが嫌いなリリーは、あまり強く締められたので脚をバタバタやらしたが、バスケットの中へ戻されると、二三度周囲を突ッついてみただけで、とても出られないとあきらめたらしく、急に静まり返ってしまったのが、ひとしお哀れをそそるのであった。
庄造は、国道のバスの停留所まで送って行きたかったのであるが、今日から当分の間、風呂へ行く以外は一歩も外出してはならぬと、女房から堅く止められているので、バスケットを提げた塚本が出て行ったあと、気抜けがしたようにぽつねんと店にすわっていた。福子が外出を禁じた訳は、リリーの様子を気遣う余りついふらふらと品子の家の近所ぐらいまで行くかも知れないからであったが、事実庄造自身にも、そう云う懸念がないことはなかった。