Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

Lisez 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 020 caractères · 131 écrans

Aozora Bunko

」

「阿呆らしいもない。」

そう云ったきり取り合わないで、又水の音を盛んにジャブジャブと立て始めた。

「いったいお母さん僕のお母さんか、福子のお母さんか、孰方だす? なあ、孰方だすいな。」

「もう止めんかいな、そんな大きな声出して、近所へ聞えたら見っともないがな。」

「そしたら、洗濯後にして、一寸ここへ来とくなはれ。」

「もう分ってる、もう何も云わへんさかいに、何処なと好きなとこへ行きなはれ。」

「ま、そない云わんと、一寸来なはれ。」

何と思ったか庄造は、いきなり勝手口へ行って、流し元にしゃがんでいる母親の、シャボンの泡だらけな手頸を掴むと、無理に奥の間へ引き立てて来た。

「なあ、お母さん、ええ折やよってに、一寸これ見て貰いまっさ。」

「何や、急からしゅう、………」

「これ、見て御覧、―――」

夫婦の居間になっている奥の六畳の押入を開けると、下の段の隅ッこの、柳行李と用箪笥の隙間の暗い穴ぼこになった所に、紅くもくもくかたまっているものが見える。

「あすこにあるのん、何や思いなはる。」

「あれかいな。………」

「あれみんな福子の汚れ物だっせ。あんな工合に後から後から突っ込んどいて、ちょっとも洗濯せエへんので、穢いもんが彼処に一杯溜ってて、箪笥の抽出かて開けられへんねんが。