Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Lisez 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 215 557 caractères · 426 écrans
雪割草は今世界が創ったというように自分のめざめを感じ、期待にみちて、又その風が雪のおもてを過ぎるのを待ちます。又風は渡って来ました。この冬のさなかに、それは何の風でしょう、雪割草がこんなに瑞々しく蕾をふくらませ、薄紅い柔らかな萼をうるませ、今こそ花咲かんという風情にうるむのは、その風がどこから吹くのでしょう。蕾はふっくりとふくらみ、汗ばみ、匂い立ち、花だけの知っている音を立てて開きそうです。でも、雪は、花の上を被うて居ります。花のぬくみで雪はとけます、けれども、あたりは冬です。月の冴える夜、枯れ枝に氷の花がつきます。その氷の花は、青く燦めきます、雪割草は白い、花弁の円みをおびた花です。蕊の色はしぶい赤です。その花より雪が白いというのは、雪が生きものでないからです。又別の日風が、雪の上をわたり、雪割草が目ざめました。雪割草はじっと蕾を傾け、自分のしなやかな溜息をききました。風もその息づきをききました。そしてその溜息を自分のふところの中に抱きとって、すぎてゆきました。が、それからは、その風が渡って来る毎に、雪割草の上に、小さい人目に立たない七色の虹がかかるようになりました。