Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

たまとりものがたり

玉取物語

久生 十蘭

Lisez 玉取物語 (たまとりものがたり) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 495 caractères · 19 écrans

Aozora Bunko

嘉永のはじめ(嘉永二年十月)のことでござった。西国のさる大藩の殿様が本国から江戸へ御帰府の途次、関の宿の近くに差懸った折、右の方のふぐりが俄に痒くなった。蕁草の刺毛で弄われるような遣瀬なさで、痒味辛味は何にたとえようもないほどであった。しばらくの間は袴の上から押抓ってなだめていられたが、仲々もって左様な直なことではおさまらない。御袴の裾をもたげ、双方の御手でひきちがえ掻っていられたことであったが、悩みは弥増ばかり、あたかもふぐりに火がついて乗物いっぱいに延びひろがり、いまにその中に巻きこまれてしまうかと思うような現なさで、追々、心気悩乱してとりとめないまでになった。

御駕籠脇の徒士は只ならぬうめき声を聞きつけ、何事ならんと覗いみるところ、こはいかに殿様には裾前を取散したあられもない御姿にて、悶え焦れるばかりに身を押揉み、なにやらん不思議なことをせられていられる態、まことに由々しく見えた。

道中奉行は行列をとめ、山添椿庵という御側医者に御容態を伺わせたが、只、「痒い、痒い」とわめかれるばかりで手の施しようもない。殿様には若年の折から驚癇の持病があられるので、大方はそのことと合点し、匆々、関の御本陣へ落着するなり、耳盥に水を汲ませて頭熱の引下げにかかったところ、殿様は「おのれは医者の分際で、病の上下も弁え