Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lisez 痴人の愛 (ちじんのあい) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 179 399 caractères · 353 écrans

Aozora Bunko

………」

私は浜田に何遍となく、「ありがとありがと」を繰り返しました。二人の間に年齢の相違、地位の相違と云うようなものがなかったら、そして私たちが前からもっと親密な仲であったら、私は恐らく彼の手を執り、互に抱き合って泣いたかも知れませんでした。私の気持は少くともそのくらいまで行っていました。

「どうか浜田君、これから後も君だけは遊びに来て下さい。遠慮するには及びませんから」

と、私は別れ際にそう云いました。

「ええ、だけれど当分は伺えないかも知れませんよ」

と、浜田はちょっともじもじして、顔を見られるのを厭うように、下を向いて云いました。

「どうしてですか?」

「当分、………ナオミさんのことを忘れることが出来るまでは。………」

そう云って彼は、涙を隠しながら帽子を冠って、「さよなら」と云いさま、「松浅」の前を品川の方へ、電車にも乗らずにてくてく歩いて行きました。

私はそれからとにかく会社へ出かけましたが、勿論仕事など手につく筈はありません。ナオミの奴、今頃はどうしているだろう。寝間着一枚で放ったらかして来たのだから、よもや何処へも出られる筈はないだろう。と、そう思う傍からやっぱりそれが気にならずにはいませんでした。