Classiques japonais avec furigana
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めをひらく
眼を開く
夢野 久作
Lisez 眼を開く (めをひらく) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 759 caractères · 20 écrans
身長もなかなか大きく五尺七八寸もあったろうか。それが巻ゲートルに地下足袋を穿いて、毎朝十一時前後にやって来る。そうして私の寝室の入口を押開けて、上り口に突立つと、不動の姿勢を執りながらギックリと上体を屈めて敬礼し、前にまわした鞄の中から郵便や、新聞や、雑誌の束を取出して恭しく私の手の届く処に差し置き、今一度謹しんで不動の姿勢を執って敬礼し、汚ない日本手拭で汗を拭き拭き立去るのであった。
しかも、そうした配達手君の敬礼は多分、あの文学青年の局長さんの私に対する敬意のお取次であったらしいことを想うと、私はいつも微笑ましくなるのであった。
最初の中、私はそうした配達手君の敬礼に対して、机の前に座ったまま、必ず目礼を返すことにしていたが、その中にだんだんと疎そかになって来た。仕事に夢中になっている時なぞ、振向いて見る余裕すら無いことが度々あるようになった。しまいにはいつ頃来て郵便物を置いて立去ったのか、わからない中に日暮れ方になって、フト傍の封のままの新聞を見て、まだ昼食も夕食も喰っていないことを思い出し、急に空腹を感ずるようなことを一度ならず経験するようになった。