Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans
「どこかで、小合戦でも起りましたか」
「まだ確報はわからぬが、どうやら宮方の残党が起って、白河口や鳥羽、北野あたりで騒ぎ出しているらしい」
「ほう」
「おそらく這奴らは、六波羅の獄舎におわす先帝(後醍醐)のおん身を、何とか、奪い回さんものとあがいているのらしいが、そうはさせぬ。……が、法師よ、いまから吉田山へ帰るなどは物騒だぞ、よせ、よせ」
「いえ、ほどなく夜も白みましょうし、それにまた、法師の気安さ」
「行くか。行くなら行け」
事態をひかえているので、道誉も見かぎッたように言い放った。けれど、兼好の背へ、もう一ト言、こう浴びせておくことは忘れなかった。
「法師、小右京のことは胸にたたんでいるだろうな。いい返辞を待っておるぞ」
――兼好はもう先へ歩いていた。空は明けしぶるような雲を低く垂れ、市中には犬の子一匹見えず、この朝の不気味さはまたかくべつだった。
未明の頃どこかでは、たしかに小合戦もあったらしいが、やはり都は広いというものか。昼になっては五条の市や坊門の人通りも、ふだんのとおりで、町はけろりとしたものだった。
だが、洛内進駐の諸大将の門では、今暁の動員そのまま、まだ武備を解いた様子はない。