Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans
そしてそれにも、彼は、公な理由を唱えた。
「各地とも、兵糧はとぼしい。大部隊が行く先々で、少ない民土の食糧を食い荒らすのは、東国方の悪政をひろめ、逆に、宮方を殖やすようなものになる」と。
腹にはべつな後日の目的があったとしても、高氏の公言は嘘ではない。
その畿内跋渉のあいだ、部下の掠奪や暴行はゆるさなかった。彼はじぶんの手足のごとく兵をつかった。数千、何万の兵はとかく統一もむずかしいが、五百騎ぐらいだと、ほぼ命令もよくおこなわれる。
「この将士五百を持てば」
高氏にすれば、こんどの出兵こそ、さまざまな意味を持つものだった。
そもそも、去年、鎌倉を立つ日の前に、彼は父の死に会っている。亡父の野辺の送りも見ず、七々の忌日も営んでいないのだ。陣中には、位牌を持って歩いていた。
だから彼はこの出兵を、ぜひとも意義あらしめたい。父も陣中とおもっている。――笠置、赤坂に目さきの功を争う輩にはやらしておけ――であった。
その彼は、ここ百余日の期間を、じつは手兵の演習に用いて来たのだ。選り残した五百の兵を鍛えに鍛えて文字どおり他日の鉄兵としておくためにだ。
「……よかった」