Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans

Aozora Bunko

人霞

「公卿日記」によると、元弘二年三月七日の天気は、前夜から風もなく、晴れが予想されていたようである。朝のま、薄雲ひくく閉じて明けなやむかの如し、とあるなどは京洛の春のつねで、盆地の朝霞が、鶏鳴となってもなかなか朝光を空に見せずにいたものだろう。

まだその頃のうち。六波羅殿舎の大屋根は墨を刷いて、内苑の篝はチロチロ衰えかけ、有明けの黒白もなお、さだかでなかった。

が。よく見ると。

主殿の中門廊のほとりに、廊の欄へ寄せて、牛を外した一輛の女車がすえられてあり、ややはなれた所には、供の人々であろうか、ひれ伏した人影が、すべて声もなく、地へ滅入りこみそうにじっとしていた。

「…………」

あまりな静けさである。漏らすまじと、御車のうちでせぐりあげている苦しそうなお忍び泣きも、ありあり外にまで洩れ聞えていた。――で従者たちもみな、もらい泣きして、地に嗚咽をこらえているのだった。

車は、中宮(皇后)の常々召される青い檳榔の糸毛車なので、内のおん方も、誰かと、ただすまではない。

中宮の禧子(後醍醐の正后)の君で、前の御簾も、まざまざ、捲き掲げられてある。

「……名残りはつきぬ」