Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans

Aozora Bunko

察するに、掻き集めの散所民や、浮浪の徒が、数の大半以上かと思われまする」

ちょうどまた、和泉、河内方面からの偵報も、その日、北岸の陣に入った。

だが隅田、高橋の二将は、

「いよいよわからん」

と、捕捉に迷った。

諜者の眼も、それぞれに違っているのだ。

楠木勢はおよそ六、七百。

と告げるのもあり、千をこえるといっているのもある。

また主将の楠木は、ここに見えず、という観察と、正成一族のほかは、烏合の土民で、住吉辺にその本陣を置く、とやや真相らしい情報もあったりする。

「いずれにせよ」

と、高橋三河守は結論を出した。

「まちがっても、敵は千前後、味方は五千。しかも、敵は烏合の浪民だろう。味方の装備や精鋭の比ではない」

ここで総攻撃の肚はきまった。

作戦も。

高橋の手勢は、橋上を押してゆき、隅田藤内左衛門の一勢は、水馬隊を編成して、橋下を泳ぎわたる――となって、前夜の北岸は五月闇のうちに殺気立った。

むろん南岸の楠木勢も、これを無関心ではいまい。それかあらぬか、大江の水をへだてた彼方には、いつもより赤い、そして数も多い遠篝が、

いざ、来い。

と、挑むばかりな意気を夜どおし焦がしていた。