Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans
その後。
北畠具行の墓石は、江戸時代の頃まで、近江柏原の峠地蔵にあって、道行く旅人に弔われていたと、古い紀行にはあるが、今は、どうなっていることか。
碑には、彼が行年四十二で、ここに斬られた命日を、
元弘二年六月十九日
と、あったという。
それから数えて、佐々木道誉が、幕府の上使糟谷孫六、三島新三らと共に、鎌倉の府へ入ったのは、六月下旬とみて、まちがいはない。
そして、彼はさっそく、北条高時の前に出て、
「ご下命のまま、これへの途中、源中納言どのを、斬に処しましてございまする。いさいは御差遣の両使より、おききとりを仰ぎたく」
と、それの報告もし、また、身の嫌疑についても、高時のいちいちな訊問も待たず、我から、釈明にこれ努めた。
「そうか。いやさようか」
終始、高時は、彼のさわやかな弁に、こッくりしていた。
ここ柳営の台閣にばかりいて、久しく道誉を見てないうちに、彼の耳にも“反道誉”の声が、だいぶ入っていたらしい。
わけて、道誉が近ごろ怪しいと風説されて、もっぱら帰還の諸将の間から、彼の二心が、とかくいわれる段になると、
「うぬ。忘恩の徒……」
高時の怒りは、一時、尋常ではなかったらしい。