Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(四) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 229 324 caractères · 458 écrans
「いや、疑うな。彼女もいまではまったく前非を悔い、宮方の不為を計る惧れなどはみじんもない」
「ホ、ホ、ホ、ホ」
廉子は、はじめて顔をほぐした。が、その黛や唇は、男の立場のくるしみを、揶揄で撫でている翳があった。
「みかど。それはそのはずではございませぬか。小宰相は妊娠ッているのですもの。みかどにしても、お愛しゅうございましょうから」
「ぜひもないではないか」
「では、やはり連れて落ちるお心でいらせられますか」
「つれて行く!」
すると廉子はキュッと唇の端を緊めた。しかし、一だん美しくホホ笑んでいるのではあった。
「おお、おつれなされませいな」
後醍醐は、憮然と黙っておられたが、やがて、
「さても女とは、不びんなものだ。そなたを初め……」
と、呟いた。
「いいえ」
廉子はすぐ強く言った。
「ご不愍の情などに、乱されているときではございませぬ。あすの夜、幸いにここは脱け出られても、海上はどうなのでございましょうか」
「知夫の港には、迎えの船が……。また沖にも、海賊岩松の党が、待つとあれば」
「そうですか」
いくぶん安心したように。
「では、おいさめはいたしますまい。かけがえのない玉体ですから、万一にも、おぼつかない計りでしたら、お止めしようかと思うてこれへ来ましたが」