Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(四) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 229 324 caractères · 458 écrans
弱い者たち
「しゃッ。この外道」
時親は、狼狽した。
大蔵の悪口雑言は決してそれだけのものではなかったのだ。事実、眼の下からは、数十人の兵がわっと道もえらばず駈けあがって来たのである。時親は髪さか立ててそれへ呶鳴ッた。さすがその叱咤と形相は、毛利時親のべつなめんを現わしていた。
「待てッ。わしは逃げん! わしは逃げんからまず忍ノ大蔵をさきに引ッ捕えろ。這奴こそ曲者だ。六波羅を売ッて生きている犬だ。その大蔵めを逃がしては各※(二の字点、1-2-22)の落度になろうぞ」
弱い者たち
冬じゅうにはなかった。春になって、それもつい先月頃からのことである。
ときどき、羅刹谷の奥まったところで、平家琵琶のかなでを独りほしいままにして、都の焦土も、千早金剛のあらしも、いや春闌けて来た山の色の移りも知らぬかのような者がいた。
ここは、洛東の三十六峰もずっと南端れの、世間からいえばほとんど世間外な山寺や古別荘ばかりな所なので、たれはばかることもいらないせいだろうか。その撥音は、かの琵琶行の詩句をかりていうなら――
大絃ハ々トシテ 急雨ノ如ク
小絃ハ切々トシテ 私語ノ如シ
※(「口+曹」