Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 116 638 caractères · 233 écrans
かえりみると。
これらの女性が世路に耐えてきたたたかいも、戦野の男どもに劣るものでなく、しかもこんな弱い群れは、武門という武門や公卿の深窓からもみな“時の波”に漂い出されて、およそ余されてはいなかった。――むしろ、尊氏の家族のごときは、幸運も幸運、最上な方だったのだ。
が、越前ノ前には、それですら、いのちの縮むほど、或る期間が、つらかった。もっとも、彼女のつらさは、漂泊の危険や生活のみじめさではなく、
母堂
みだい所
嫡男の若ぎみ
などのなかで、武家家族として共々にその家憲や作法の規矩にしばられていなければならなかったこの長い月日が、口にもいえぬ気苦労であったり、情けなさであったらしい。おなじ尊氏の子でありながら、しかも不知哉丸は長子であるのに、事々に、周囲の老臣や侍女は、
「千寿王さま。若君さま」
と、これを立てて、不知哉丸には意識的に差別をする。
でも、彼女は、
「ひがむまい」
と、自分の卑下で自分を抑えころしてきた。しかし、いつまでたっても、彼女には、武家生活に溶け込めず、そして目下の男女を目下と頤使するような思い上がりにもなれないのだった。