Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 598 caractères · 254 écrans
彼も乱痴気な酒席に返って、再びわざと、へべれけな酔いを振舞いながら、本間三郎をはじめ、女や取巻きのすべてが、それぞれの寝所へかたづくのを見届けていた。
それからのこと。――右馬介は一たん下屋へさがって、密かに身軽な装いをととのえ、約束の搦手の濠へ行って、阿新が来るのを待った。……ほどなく、妙宣寺の鐘も聞えてくる。
小降りだが、風はやまず、濠の竹むらは、たえず大波をゆりうごかして、木々のこずえと、吠えあっている。
「はてな?」
右馬介は、不安になった。――来ないのだ。約束の鐘は過ぎたのに、阿新の姿は見えない。
「……やはり子供よ。つい寝込んでしまったものか。……いやいやいくら子供でも、まさかそんなこともあるまい」
落ち合う場所でも、間違えているのではないかと、彼がそこの位置をすこし動きかけたときである。
西曲輪の方で、人々の喚きが起った。風の中を、みだれ飛ぶ松明は、ただ事ではない。大勢の足音や人影の一部は、こっちへも近づいてくる。
「しまった。さては阿新どの、見つかったな」
たちどころに、それは右馬介自身の危急ともなった。ぜひなく、彼は大樹の横枝をつたわって、濠の外へ跳び渡った。