Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 598 caractères · 254 écrans

Aozora Bunko

お分りだろう、これならば」

「ム、分った。かたじけない」

正季は、二人が帰ると、すぐ厩の方へ駈けて行った。

乾き切った山里道の登りを、正季の駒は、戛々と、喘いで行く。

道に沿う水分川に水音なく、農家も死んだ虫籠みたいに声さえしない。この一川を灌漑としていた川下数十ヵ村の田や畑も、すべて枯死を呈しかけていた。

「無慈悲な太陽……」

たまたま、気力のない百姓の男女が「……オオ、龍泉の御分家様よ」と、彼の姿へ身をかがめるのを見ても、正季は、彼らの眼に責められるような気がしていた。

「……おれには、雨を降らせる力がない」

ままになるなら、こんなときこそ、彼らの上へ、雨をも降らせてやれるのでなければ、ほんとの領主でない気がする。彼らの土下座をうける資格があろうかと、自問自答が起るのだった。

楠木家は。と、正季は考えてみる。

なにしろ古い。よほど遠い以前から土着した家とは、彼にも信じられる。

遠祖は、敏達天皇の裔、橘ノ諸兄からと、いわれているが、そんな遠くの血は、水分川の水上の滴りが知れないように、彼にも分らない。

しかし、橘を氏とし、橘を家の紋とし、源平争覇のころから、代々の楠木家の祖先が、よほどな粒々辛苦で、土豪の地位を、築いてきたものには、ちがいあるまい。