Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あきのまぼろし

秋の幻

豊島 与志雄

Lisez 秋の幻 (あきのまぼろし) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 242 caractères · 9 écrans

Aozora Bunko

或る田舎に母と子とが住んでいた。そして或る年の秋、次のようなことがあった。――

「もう本当に天気がよくなったのでしょう。」

「そうね。」

母と子とは、或る朝そんな会話をした。そして二人共晴々した顔を挙げて、青く澄んだ大空を見上げた。大空を見上げる前彼等の視線は、広い野の上を掠め、野の向うに聳立っている山の頂を掠めた。そして今、視線が更にその上の青い大空のうちに吸い込まれると、彼等は何とはなしに微笑みを洩した。

その年は、初秋の頃から殆んど毎日のように梅雨のような雨が降った。それは、空から落ちて来るのではなくて、地から舞い上る糠雨のようであった。往来には深い泥濘が出来、家の中はじめじめしていた。村の人達は、鶏小屋の掃除や牛馬の□に苦心した。それよりもなお一層、稲や蕎麦の実入りや大根や里芋の収穫に心痛めた。そして彼等は毎日眉を顰めて雨の空を見上げながら、ぶらぶら遊んでいた。

けれどいつとなくその長雨が霽れると、小春のいい天気に返った。少しく南に廻った鈍い日脚が、野の上を一面に黄色く輝かした。そして大地の上は見渡す限り、活動と収穫との時期に返った。雨に痛んだものは何もなかった。