Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あさまさんろく

空にむかひて 若杉鳥子随筆集

若杉 鳥子

Lisez 空にむかひて 若杉鳥子随筆集 (あさまさんろく) de 若杉 鳥子 (わかすぎとりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 542 caractères · 14 écrans

Aozora Bunko

独り旅

汽車がA駅を通過する頃から曇って来て、霧で浅間の姿も何も見えなくなった。冷たい風と一緒に小雨が降り出して、山際の畔で、山羊が黙々と首を振っている。三つめの駅で汽車を降りた時には、もう日が昏れかけていたし、自動車もあるにはあったが、目的地まで半里だというので、ナニ歩けないことはない――脚には少し自信があるので、私は日和下駄のまま歩き出した。

街はずれで、青い事務服をお揃いに被た娘さん達の群に逢う。この辺の女工さん達が監督に引率されて、遠足にでも出かけた帰りらしい。雨に濡れながら駅の方へ急いでいた。街を出はずれると、それっきり人ッ子ひとり通らない。雨はますます激しくなり、道は爪先き上がりになってくる、所々にある木小屋なども見えなくなると、左は奥深く真っ暗な落葉松の森林だ、右は崖っぷちで、もうもうと立ち罩めた霧の底を流れてゆく水勢だけが、見えないので不気味にすさまじい。しまった、と思ったが、引き返すのも口惜しかった。だがこんな処で霧に包まれてしまったら、どうなるのか解らないという不安に私は段々駈られ出した。歩くにも何一つ目標がなく、眼前に折り重なっていた山々も悉く姿を消してしまって、ただ自分だけが、雨と汗にぬれそぼちながら、徒に霧の中を泳いでいるのだった。