Classiques japonais avec furigana
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さいきこうい
細木香以
Lisez 細木香以 (さいきこうい) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 332 caractères · 45 écrans
はわたくしのために有益であった。
十三
本郷の追分を第一高等学校の木柵に沿うて東へ折れ、更に北へ曲る角が西教寺と云う寺である。西教寺の門前を過ぎて右に桐の花の咲く寄宿舎の横手を見つつ行けば、三四軒の店が並んでいて、また一つ寺がある。これが願行寺である。
願行寺は門が露次の奥に南向に附いていて、道を隔てて寄宿舎と対しているのは墓地の外囲である。この外囲が本は疎な生垣で、大小高低さまざまの墓石が、道行人の目に触れていた。今は西教寺も願行寺も修築せられ、願行寺の生垣は一変して堅固な石塀となった。ただ空に聳えて鬱蒼たる古木の両三株がその上を蔽うているだけが、昔の姿を存しているのである。
わたくしはある日香以が一家の墓を訪おうと思って、願行寺の門を入った。門内の杉の木立の中に、紺飛白の浴衣を著た壮漢が鉄唖鈴を振っていて、人の来たのを顧みだにしない。本堂の東側から北裏へ掛けて並び立っている墓石を一つ一つ見て歩いた。日はもう傾きかかって来るに、尋ぬる墓表は見附からなかった。
忽ち穉子の笑う声がしたので、わたくしは振り向いて見た。顔容の美くしい女が子を抱いてたたずんで、わたくしの墓表の文字を読んで歩くのを見ていた。