Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ぐんしゅう
群集
豊島 与志雄
Lisez 群集 (ぐんしゅう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 675 caractères · 10 écrans
「御免なさい、悪い気でしたんじゃない。……おう痛い。ひどいことを! 御免なさい。」私はその男を何ということもなく、牛乳配達夫だと思った。
そういう風に泣き声に叫んでいる「牛乳配達夫」を、二人の鳥打帽の男は鷲掴みにしていた。「ともかく其処まで来い。」と彼等は鋭い声で云った。そして駒下駄で一つ男の向う脛を蹴りつけた。「痛い!」と男はまた叫んだ。一人は彼の左肩を捉え、一人は彼の右腕を無理にねじ上げた。彼は額に油汗を流してなお抵抗した。然しやがて二人の力で電柱からもぎ離されてしまった。ねじ上げられた腕で一間ばかり引きずられると、彼は遂に観念したと見えておとなしく歩き出した。二人の者は、彼を間に挾んで向うの暗闇のうちに消えてしまった。
それらの光景を群集はただじっと見ていた。三人が去ってしまっても、後からついて行った四五人の者を除いては、誰も身動きもしなかった。「刑事だ!」と低く囁く声がした。然しその後はまたしいんとなった。陰惨な沈黙だった。皆何かしら腹を立ててるらしかった。私も腹が立っていたというより寧ろ訳の分らぬ苛ら立ちを感じた。然しそれが、深い夜と薄暗い横町と異様な沈黙の群集との間だっただけに、一層不気味な心地だった。