Classiques japonais avec furigana
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せいアレキセイじいんのさんげき
聖アレキセイ寺院の惨劇
小栗 虫太郎
Lisez 聖アレキセイ寺院の惨劇 (せいアレキセイじいんのさんげき) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 638 caractères · 65 écrans
それも、僕等の眼に見えない橋があるのだから、いつかきっとやって来るに違いないよ。」と云ったものの、彼には平素の精気が全然見られなかった。
その頃から霙が降り出して烈風がまじり、ちょうど昨日と同じ天候になったが、法水は人々を遠ざけて独り鐘楼に罩ったきりいつまでも出てこなかった。そして、その間彼の実験らしい鐘声が何度かしたけれども、ついに期待した一鳴りを聴くことが出来なかった。夕方になると、やっと法水は疲労しきった姿を現わして、
「熊城君、君の成功を祈るよ。だけど、その時もし犯人の捕縛が出来なかったら、姉妹の誰か一人に云って、僕の事務所にナデコフの置洋燈を持って寄越させてくれ給え。」
そして、霙の中を帰って行ったが、その一時間程後に、扉の外でふたたび彼の声がした。
「法水だがねえ。すまないが、回転窓の朱線を消して、壁燈をつけてくれ給え。」
壁燈を点けに行った刑事の一人が、何気なく窓の外を見ると、中空に浮んだ一枚の紙鳶が、暗夜の帆船のようにスウッと近づいて来る。――ああ、法水はなにゆえに、壁燈をつけて朱線を消し、紙鳶を上げたのだろうか?
ところが、その夜法水は何時になっても、寝ようとせず、眼に耳に神経を集めて、何物かを見、あるいは聴き取らんとするかのごとくであった。