Classiques japonais avec furigana
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おに
聴雨・蛍 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lisez 聴雨・蛍 織田作之助短篇集 (おに) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 483 caractères · 41 écrans
「忘れて弱り、忘れて助かるというわけかね」
「しかし、これからはだめだ。探して出て来ても、旧円じゃ仕様がない」
「みすみす反古とは、変なものだね。闇市で証紙を売っていたということだが、まさかこんな風に出て来た紙幣に貼るわけでもないだろう」
そう言うと、彼は急に眼を輝した。
「へえ……? 証紙を売ってるって? 闇市で、そうか。たしかに売ってるのか。どこの闇市?」
「いやに熱心だが、買いに行くのか」
すると、彼は、
「誰が、面倒くさい、わざわざ買いに行くもんか。しかし、待てよ。こりゃ小説になるね」
そう言って、パイプに紅茶をつめると、急に喋りだした。
「――十人家族で、百円の現金もなくて、一家自殺をしようとしているところへ、千円分の証紙が廻ってくる。貼る金がないから、売るわけだね。百円紙幣の証紙なら三十円の旧券で買う奴もあるだろう。すると十枚で三百円だ。この旧券の三百円を預けるとそのまま新円で引き出せる。三百円あっても大したことはないが、三百円はいったということで、少し甦った気になるね。何かしら元気がついて、一人の子供が思い切って靴磨きに行く。この収入月にいくらすくなくても五百円になるだろう。