Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

Lisez 肌色の月 (はだいろのつき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 50 706 caractères · 101 écrans

Aozora Bunko

石倉に首を絞められ、水藻のゆらぐ仄暗い湖水の深みで必死に藻掻きながら、死というものの顔を、まざまざとこの眼で眺めた恐怖と絶望の瞬間。

「ああ」

久美子は悚みあがり、われともなく鋭い叫声をあげた。

まさに絶えようとする時の流れ……必死に抵抗していたのは、一秒でも長く命をつなぎとめようという、ただそのための藻掻きだった。

死ぬことなんか、なんでもないと思っていたのは、なにもわかっていなかったからだ。あの辛さの十分の一でも想像することができたら、自殺しようなどという高慢なことは考えなかったろう。

「あたし助かったんだわ」

自分というものを、こんなにいとしいと思ったことがなかったような気がし、久美子は感動して眼を閉じた。

「気がつかれましたね」

隆は久美子の顔をのぞきこむようにしてから、仔細らしく脈を見た。

「もう大丈夫ですが、覚醒したら、臨床訊問をするといっていますから、念のためジガレンを打っておきましょう」

久美子は無言のまま、マジマジと隆の顔を見あげた。なぜか、ひどく寛大な気持になり、怨みも憎しみも感じない。湖底の活劇は、遠いむかしの出来事のようで、いっこうに心にひびいて来なかった。