Classiques japonais avec furigana
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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
Lisez 自叙伝 (じじょでん) de 大杉 栄 (おおすぎさかえ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 115 021 caractères · 230 écrans
伊藤は顔まで蒲団をかぶって、向うを向いてじっとして寝ていた。僕がふと目をあけた時、僕は神近が恐ろしい顔をして、それを睨んでいるのをちらと見た。
「もしや……」
とある疑念が僕の心の中に湧いた。僕は眠らずにそっと彼女等を窺っていなければならないときめた。が、いつの間にか熱は僕を深い眠りの中に誘ってしまった。
四
目をさました時にはもうかなり日が高かった。神近も伊藤も無事でまだ寝ていた。僕はほっとした。
朝飯を済ますと、伊藤はすぐ出て行った。勿論東京へ帰ったのだ。が、神近はそれを疑っているようだった。もともと僕と一緒にずうといるつもりで来たので、今は自分が来たからちょっと近所のどこかで避けて、また自身が帰ればすぐここへ来るのだろう、というような口ぶりだった。彼女は割合に人が好くて、ごく人を信じやすいかわりには、疑い出すとずいぶん邪推深かった。僕はもう彼女の邪推と闘うには、あまりに彼女に疲れていた。そうでなくても、きのう彼女が「侵入」して来て以来の僕の気持は、とうてい静かに彼女と話しすることを許さなかった。しかしまた、彼女をすっぽぬかして伊藤と一緒にここへ来ているという弱点は、彼女に対してあまり強く出ることも許さなかった。