Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lisez 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 410 131 caractères · 824 écrans

Aozora Bunko

「あなた、ですか?」

と、声をかけた。

夫が帰ったのではないか、と思ったのである。剽軽なところのある金五郎は、夜おそくなると、よく、こっそり、入って来ては、マンをおどかすことがあった。それは照れくささをごまかしているのだが、今夜も、五日も留守をあけた気兼ねで、そっと、忍びこんで来たのかも知れない。

「あなた、でしょ?」

と、もう一度、いった。

ガタガタと、あわてふためいた開けかたで、襖が開いた。頬かぶりした、菜ッ葉服姿の男が、調子の狂ったゼンマイ人形のように、騒々しく、おどりこんで来た。

マンは、びっくりして、蒲団のうえに、はね起きた。坐ったまま、急いで、寝巻のうえに、着物をひっかけた。

「どなたですか?」

「泥棒様じゃ、さ、騒ぐな」

右手に、出刃庖丁を持っている。それを、マンの鼻先につきつけた。月光のほてりで、ずんぐりした兇器の厚ぼったい刃が、にぶく白い。その庖丁に、マンは、鉄と魚のにおいをかいだ。ところが、よく見ると、その庖丁は、まるで電気アンマの機械のように、間断なく震動している。つまり、泥棒が全身をわなわなとふるわせているのにつれて、庖丁も動いているのである。