Classiques japonais avec furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lisez 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 133 224 caractères · 269 écrans
私たちはその事を予想して前以て深く嘆息したのである。
私は雑草が好きだ。菫蒲公英のような春草、桔梗女郎花のような秋草にも劣らず私は雑草を好む。閑地に繁る雑草、屋根に生ずる雑草、道路のほとり溝の縁に生ずる雑草を愛する。閑地は即ち雑草の花園である。「蚊帳釣草」の穂の練絹の如くに細く美しき、「猫じゃらし」の穂の毛よりも柔き、さては「赤の飯」の花の暖そうに薄赤き、「車前草」の花の爽に蒼白き、「」の花の砂よりも小くして真白なる、一ツ一ツに見来れば雑草にもなかなかに捨てがたき可憐なる風情があるではないか。しかしそれらの雑草は和歌にも咏われず、宗達光琳の絵にも描かれなかった。独り江戸平民の文学なる俳諧と狂歌あって始めて雑草が文学の上に取扱われるようになった。私は喜多川歌麿の描いた『絵本虫撰』を愛して止まざる理由は、この浮世絵師が南宗の画家も四条派の画家も決して描いた事のない極めて卑俗な草花と昆虫とを写生しているがためである。この一例を以てしても、俳諧と狂歌と浮世絵とは古来わが貴族趣味の芸術が全く閑却していた一方面を拾取って、自由にこれを芸術化せしめた大なる功績を担うものである。