Classiques japonais avec furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lisez 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 133 224 caractères · 269 écrans
両側に立ち続く小家は、堤の上に板橋をかけわたし、日満食堂などと書いた納簾を飜しているのもある。人家の灯で案外明いが、人通りはない。
車は小松嶋という停留場につく。雨外套の職工が降りて車の中は、いよいよ広くなった。次に停車した地蔵阪というのは、むかし百花園や入金へ行く人たちが堤を東側へと降りかける処で、路端に石地蔵が二ツ三ツ立っていたように覚えているが、今見れば、奉納の小さな幟が紅白幾流れともなく立っている。淫祠の興隆は時勢の力もこれを阻止することが出来ないと見える。
行手の右側に神社の屋根が樹木の間に見え、左側には真暗な水面を燈火の動き走っているのが見え出したので、車掌の知らせを待たずして、白髯橋のたもとに来たことがわかる。橋袂から広い新道路が東南に向って走っているのを見たが、乗合自動車はその方へは曲らず、堤を下りて迂曲する狭い道を取った。狭い道は薄暗く、平家建の小家が立並ぶ間を絶えず曲っているが、しかし燈火は行くに従って次第に多く、家もまた二階建となり、表付だけセメントづくりに見せかけた商店が増え、行手の空にはネオンサインの輝きさえ見えるようになった。