Classiques japonais avec furigana
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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Lisez 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 633 caractères · 74 écrans
幾世紀の洗練を経たる Alexandrine 十二音の詩句を以て、自在にミュッセをして巴里娘の踊の裾を歌わしめよ。われにはまた来歴ある一中節の『黒髪』がある。黄楊の小櫛という単語さえもがわれわれの情緒を動かすにどれだけ強い力があるか。其処へ行くと哀れや、色さまざまのリボン美しといえども、ダイヤモンド入りのハイカラ櫛立派なりといえども、それらの物の形と物の色よりして、新時代の女子の生活が芸術的幻想を誘起し得るまでには、まだまだ多くの年月を経た後でなければならぬ。新時代の芸術の力をもっともっと沢山に借りた揚句の果でなければならぬ。然るに已に完成しおわった江戸芸術によって、溢るるまでその内容の生命を豊富にされたかかる下町の女の立居振舞いには、敢て化粧の時の姿に限らない。春雨の格子戸に渋蛇の目開きかける様子といい、長火鉢の向うに長煙管取り上げる手付きといい、物思う夕まぐれ襟に埋める頤といい、さては唯風に吹かれる鬢の毛の一筋、そら解けの帯の端にさえ、いうばかりなき風情が生ずる。「ふぜい」とは何ぞ。芸術的洗練を経たる空想家の心にのみ味わるべき、言語にいい現し得ぬ複雑豊富なる美感の満足ではないか。