Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はなばなしきしゅんかん

華々しき瞬間

久坂 葉子

Lisez 華々しき瞬間 (はなばなしきしゅんかん) de 久坂 葉子 (くさかようこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 45 114 caractères · 92 écrans

Aozora Bunko

流行性感冒にかかったということは、平常から体が弱っていたのだと、たか子は解釈していた。彼女は夫を疑わなかった。夫婦関係の間隔がいつのまにかひろくなっていたのだ。

「今、何時だろう」

「二時すぎよ」

仁科六郎は又目を閉じた。

「あなた、うわごと云ってらしたわよ」

「なんて」

「よくわからなかったけど御仕事のことでしょう。私、会社へ今朝電話しておきました」

「そうか」

仁科六郎の瞳の裏に阿難が浮んでいる。夢で、ドビュッシーをきいていたのだ――阿難がピアノを弾いている。その背後に自分がたっている。突然、彼女が弾く手をやすめた。ところがピアノは鳴りつづけている。ふしぎでしょう、と彼女が笑う。そして、ピアノの傍からどこかへ逃げ出そうとする。自分が追いかけようとする。突然、彼女が両手で顔を掩い泣きはじめた。近寄ると、私を苦しめないでと云う。――

仁科六郎は、阿難が泣いている姿を、現実にみたことがないのに、夢でみたことに何か不安を感じた。

「ねえ、どっちだと思う。男の子かしら女の子かしら」

「どっちがいい」

「女の子がほしいの」

「何故」

「私が、女にうまれてよかったと思うから」